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POSカルテの書き方と報告書への応用 | 株式会社ゆうせん堂

ナイトセミナー

POSカルテの書き方と報告書への応用

第1回のBasic seminarでは、POSカルテの書き方について学習を行った。共有カルテはゆうせん堂における情報交換で最も重要な書類であり、充実した記載が求められる。しかし、養成施設によってはカルテ作成に関する十分な指導が行われていない場合もあるため、今回の研修となった。さらにPOS形式のカルテを記載することは報告書の作成に有用と考えている。

1. はじめに

カルテは患者を診察、治療する上で必要不可欠な資料といえます。それぞれの病院や施設によって様々な形式がありますが、今回はPOS方式について紹介します。

2. 概要

① 情報の共有カルテ

情報は患者に関わるすべてのスタッフにとって必要なものであり、合併症や既往症、患者の生活像に至るまで必要な情報はできるだけ詳細に収集されるぺきである。特に感染症などの危険を伴う情報や患者の生命に関わる情報は必ず誰もがわかるように明確しなければならない。当然のことながら情報を共有する上で一般的でない言葉(略語や東洋医学用語を含む)は極力さけた方がよいであろう。

② 情報の信頼性

いくら多くの情報があったとしても、それらが信頼性に欠けるものでは有益な情報とはいえない。できる限り情報源を明確にし、万が一情報が曖昧な場合はその旨を書き添える必要がある。特に患者と家族で話の内容に食い違いがある場合、安易に家族を信用せずに冷静な判断を心がけたい。

③ 情報の管理

情報を常に整理し管理することは、守秘義務の観点からも重要なことである。カルテは統一した用紙にPOSなどの決まった書式で記入し、安全な場所に一元管理する。当然、その持ち出しや破棄にも注意を払わねばならない(5年間の保存義務)

3. POSカルテ形式とは

POS形式とは患者の抱える医学的、精神的、社会的問題点にスポットを当て患者を総合的に診療していく形式のことで、正式には”問題志向型方式Problem Oriented System”と言う。POS形式ではカルテは(a)基礎データ,(b)問題リスト、(c)初期計画、(d)経過観察、(e)退院時要約の5つのパートに分けて記入する。これからそのそれぞれについて説明して行くが、POSにおいては細かな書式よりも問題点にスポットを当てた”志向”が大切になるので注意して頂きたい。

4. 基礎データ defined data base

① 主訴Chief Conpreints

主訴とは患者が受診をする気になった、または最も気にしている自覚症状のことである。患者自身の言葉を用いてできるだけ簡潔な言葉で箇条書きにする。患者からの聴取が難しい場合には、家族の言葉や傷病名を用いることもある。

② 現病歴 History Of The Present Illness

現病歴とは現在の主訴がどのように始まり、どのような経過を経て現在に至ったのかについて記したもので、問診上もっとも重要なものといえる。患者の話が要領を得ない場合でもできるだけ時間をかけ詳しく聞くことが大切で、決して誘導尋問してはいけない。

  1. 発症の経緯
    症状がいつどのように始まったかを示す。発症年月日が曖昧な場合でも”何月頃”や”何年春頃”などできる限り正確に書き、1何年前頃という相対的な表記はしない。また症状がどのように始まったか(急性、亜急性、慢性など)や何かきっかけがあったかなどは診察上重要な情報である。
  2. 症状の内容とその出現パターン
    ここでは症状の性質、部位、程度、および出現パターンを聞く。症状が疼痛の場合、その部位や範囲、痛みの性質などは重要なので、痛みの程度表現についてはできる限り患者の言葉を用いる。またVASやペインスコアなども有用な方法である。また出現した症状がどのぐらいの間継続するか、増悪・軽減因子や前駆症状はあるのかなども聞いておくとよい。
  3. 現在までの経過
    症状が出現してから現在までの経過を記入する。症状が徐々に進行しているのか、変化していないのかなど程度の経過の他に、患者が受けた治療や検査、その結果も聞いておく。医療機関を受診している場合は病院名、検査内容などを、市販薬を使用している場合は、その内容を詳しく聞いておくとよい。経過は必ず年代順に並べて書き複雑な場合は年表形式で書くと分かり易い。

③ 既往歴 Past History

患者が出生してから今回の発症までにどのような健康状態であったのか、またどのような病気にかかったのかを記したものである。疾患名の他に事故、体質、習慣などが含まれる。既往疾患については現病歴同様に年表形式で記入するが、年齢も書いておくとより分かり易い。わかっている限り疾患名で書けばよいが、往々にして医師が便宜上診断名をつけている場合があるので、その時の症状、検査、経過なども併せて聞いておくとよい。

④ 合併症 Complication

基礎疾患とは別に現在患者が有している疾患。既往症がすでに完治した疾患なのに対して、合併症は現在進行形のものが対象になる。診断名だけでなく発症年月日や現在の病状、治療内容、管理している医療機関名なども書いておく。

⑤ 合併症 Complication

現象には症状を診断治療する上で必要な検査所見や観察内容を記入する。大きく一般的所見とその他の所見に分けることができる。一般的所見には受診した患者に対してスクリーニング的に行われる検査や観察内容を書き出し、その他所見では鑑別診断に必要となる検査所見や観察内容が含まれる。所見をより客観化するために各種スコアや評価表なども利用されている。

  1. 一般的所見
    • バイタルサイン(血圧、脈拍、体温)
    • 排尿、排便、食欲、睡眠
    • 身長、体重、体格
  2. 理学的所見(可動域、姿勢、理学テストなど)
  3. 神経学的所見
    • 反射(深部反射、病的反射)
    • 筋力(MMTで記入)
    • 感覚(表在感覚、深部感覚)
  4. 生化学的所見(血液・尿検査など)
  5. 画像所見(単純X線、CT、MRlなど)
  6. 日常生活活動(ADL)
  7. 触診所見……etc

⑥ 患者プロフィール

患者プロフィールとは患者の現在の生活像を示したものをいう。ここには家族構成、就労状況、経済状態などが含まれる。患者が寝たきりの場合は介護状態も重要な生活像である。

5. 問題リスト problem list

問題リストとは基礎データで集まった情報を元に患者の問題点を整理したものでPOS形式カルテの最も特徴的な部分である。身体的問題、精神的問題、社会的問題に分けて優先順に箇条書きし患者を総合的に考察し、治療の指針とする。身体的問題については病歴や現象を参考に書き診断名(傷病名)があればそれを優先する。診断名がない場合は無理につけずに症状名や異常所見を記述する

6. 初期計画 initial plan

短期目標short term goalsと長期目標long term goalsを設定し、問題を解決するための方法を問題項目ごとに書き出したものをいう。できるだけ具体的に、誰が、いつ、どのようにして解決するかを計画する。医学的なアプローチに限らず、家族やケアスタッフを含めた多方面からの解決法を考える。また、必要に応じて見直しや変更も行う。

7. 経過観察 progress notes

① 概論

POS形式のカルテで問題リストと並んで特徴的なのがこの経過観察である。これは経過内容を作成した問題リストごとにsubject / Object / Assessment / Planの4つの項に分けて記入し一見して症状の経過がわかるようにしたもので、それぞれの頭文字をとってSOAP形式呼んでいる

② S(Subject)主観的所見

Subjectには主訴やその他の新たな事柄に対する患者の訴え、自覚症状を記入する。家族やケアスタッフからの訴え、希望もこの部分に書き込む

③ O(Object)他覚的初見

“S”で訴えられた内容に対する検査や観察などの他覚的所見を記入する。特に訴えがない場合でもバイタルサインなどの定期チェック項目があれば記録する。もちろんその他にセラピストが見っけた異常所見があれば書き込む。

④ A(Assessment)評価

“S”と”O”から得られた情報を元にして考察・評価した内容を書き込む。具体的には「順調」や「悪化」などの症状に対する評価やその理由、問題解決のために考えた指導や働きかけに対する評価が含まれる。

⑤ P(Plan)計画

PlanではAssessmentを元1こした今回の治療内容や今後の検査などの情報収集計画を箇条書きにする。今までの計画の変更や中止があれば書き添える。

8. 退院時要約discharge summaryまたは最終経過ノートfinal progress notes

ここでは、経過記録を元に行った治療内容と回数、家庭プログラム指導の有無とそれを行う際の自立度、患者や家族に対する指導を要約する。患者が購入した器具、在宅保健サービス機関や専門機関との連携などについても記入しておく。 また、患者が治療を休んだり断ったりした事例は、日時と理由を書き添える。患者の退院または転院する場合は、その理由と転院先、さらに今後のフォローアップ治療やケアに関する報告なども作成する。要約を作成することによって、記録が徹底されていたか、信頼性があるか、効率的か、分析的センスがあるかなどを監査することも可能となる。

9. POSからFORへ

POS形式は患者の問題点を見つけようとする姿勢が、患者の否定的側面に必要以上に着目させてしまうおそれや、一度問題点に挙げられたものが既成事実として見なされると、この問題が続く限りそれが患者にとって本当の問題点であるか再検討されにくいという欠点がある。

そこで、新たに考えられたのが、患者の機能的状態の変化に着目した記録様式「機能的帰結報告Functional Outcome Report 以下FOR」である。FORの機能帰結には、明確な期間内に測定されうる現実的で良心的な活動で、病院環境以外でも達成されうる個々の患者に要求される日常生活や仕事、余暇などの社会的活動を含めた機能的状態を記録の対象としている。この方法は保険請求の正当性をアピールさるために考案されたが、設定する期間内により正確な治療や訓練を行うために有用な方法として注目されている。

10. まとめ

POS形式のカルテの書き方について紹介しました。この形式は効率的に診療を進める上で優れているだけでなく、セラピストに対する教育的要素も含んでいます。患者の問題点を正しく把握しAssessmentするためには、問題に対する正確な知識や観察能力が要求されます。リハビリテーション分野では多くの職種の人と関わる機会が数多くあります。医師やケアマネージャーをリーダーとしたチーム医療の一員として恥ずかしくない”知識と志向”を兼ね備えることが今後さらなる信用を獲得する上でも重要と考えていまず。